【SS】トリーアひとりぼっち(2)

どれ位の時間が過ぎたのかな……。
ルーは薄着で冷えた体を抱いてうずくまっていた。

ホームシックに負けそうな心で見遣った先の家屋達は、ひとつ…またひとつと灯りを消していく。
そろそろ子供は眠る頃。
睫毛を濡らしていた涙がとうとう頬を伝う雫になって流れ落ちた。
堰を切って零れたそれは雨粒のようにトリーアの石畳染めて――。


「――…。」

凍える夜風に乗って、遠くから誰かが私を呼んでいる気がする。
なんとなく、なんとなくだけど…お兄ちゃんがお迎えに…来てくれたのかな、なんて。
期待半分、確信半分。
それはいつだって、兄達は自分を気に掛けてくれていたから。
今日のプチ家出も甘えた心の表れだって、本当は自覚もしていたのだった。

「ルー!こんな所で……。」

駆け寄る足音に慌てて袖口で瞼と鼻を拭う。
ゆっくり顔を上げれば、そこには白い吐息を吐きながら肩を揺らすアルビオンが立っていた。
くしゃくしゃの顔で見上げる妹。
眉根を寄せて心配そうな表情で彼女を見下ろす兄。

身を屈めた彼がルーを優しく抱き包む。
そしてそっと髪を撫でれば、諭す様に言葉を紡ぎだした。

長兄がルーパスを心配している事…
夕食も食べずに待っている事…
暖かいお風呂も用意されている事…

その声で、所作で、温められている…そんな気持ちになる。

「さ、機嫌を直して…一緒に帰ろう?」

最後に兄が柔らかく微笑み、仲直り。
手を引かれ立ち上がったルーはアルビオンにぎゅっと抱き付いた。
ごめんなさい。お兄ちゃん、大好き。

早くお家に帰らなきゃ、ね。



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